有報は経理部のためにあるんじゃない。投資家のためにあるんだ!
前回の続きです。
たとえば、決算短信や配当予想の修正データから企業が発表した予想配当をまとめて抜き出すようなことが簡単にできるようになりました。予想配当と株価と組み合わせれば、予想配当利回りが高い投資先を選ぶこともできます。
比較は簡単となると、いきおい次は財務指標を計算してみようと思うわけです。
たとえば、「売上債権回転率」という指標があります。この指標の計算式は以下のとおりです。
売上債権回転率=売上高÷売上債権
上記計算式における「売上高」とは何でしょうか。
金融庁が公表している 勘定科目一覧 によると売上高は「NetSales」というエレメントであることがわかります。XBRLの考え方によれば、財務諸表上の見た目の科目名(ラベル)が「売上高」でなくても、売上高に相当する概念の項目がNetSalesとなっているはずです。売上高がない会社なんてあるわけない*1のだから、必ずNetSalesがあるはずです。
でも、そんなに単純じゃないんです。
たとえば私がよくお世話になる日本航空(JAL)では、売上高に相当する項目は「営業収入」というラベルで、エレメントは「OperatingRevenue1」が使われています。NetSalesというエレメントはありません。
つまり、財務指標の計算式に用いる概念である「売上高」と、XBRLのエレメント「NetSales」は範囲が異なるのです。
そのため、XBRLを使って財務指標を計算するためには、計算式に用いる概念の「売上高」が、どのエレメント(「NetSales」「OperatingRevenue1」その他)に該当するかということを整理して、集約していく必要があるのです。そして、どのエレメントを「売上高」にするかという集約方法にルールはありません。
これはある程度やむえないことだとは思います。財務指標の計算式自体があまり厳密なものでもありませんし。
でも、それにしたってEDINETタクソノミの勘定科目(エレメント)が4000っていうのはちょっとやりすぎだと思いませんか。4000ものエレメントを1つ1つ見ていって、ターゲットのエレメントを洗い出す作業がどれだけ大変か。有報作成者である経理担当者のこだわりも分からないではありませんが、エレメントが増えすぎるとXBRLの良さがどんどん失われていきます。
金融庁は、タクソノミの設計段階でも作成者側からの意見は積極的に集めていたようですが、情報を使う側の意見を集めていたようには見えません。XBRLを普及させるためにも、これからはもっと投資家や情報ベンダーなど有報/XBRLの利用者サイドの意見をもっと聞いていくべきです。
*1:準備中とか倒産しているという特殊な事情をのぞいて、です